「初め、山は山であり、川は川である。それが山がもはや山でなくなり、川がもはや川でなくなる。そして最後にまた、山は山であり、川は川であるのだ。」
私の作品には、自然を映し出したものが少なくないが、それは必ずしも写実的にということではない。つまり、風景を見える限りにおいて写し取ろうとしたものではないということである。それは私にとって重要なことではない。私の作品が自然を映しているというのは、私の制作過程そのものの中に自然に於ける生成がが反映されているということであり、また、私の描く過程における素材同士の相互作用が、そのまま自然の中にも見られるということである。私はこの生成過程、相互作用に注目して、それらを美術という人為の中に表現する。そしてその表現が、逆に作品を見る者の意識を自分の置かれた環境へと向けることを期待しているのである。
私は作品の中でしばしば、時間と変化というテーマと取り組んできた。作品の表面にはひびが入るし、また、垂れ落ち、変化し、変質する。それは自然界においても同じである。自然に於けると同じく、ある素材はまじりあわないし、あるものは粘着せず、そしてあるものは互いにはじき合う。私の仕事場の条件はきわめて悪い。夏にはそこはサウナになるし、冬は冷蔵庫だ。私はこの極端な環境をうまく使って、自然界にもたらされた不調和を作品の中に際立たせようとしている。そして、私の作品が、我々を取り巻く物事、我々の住んでいるところ、我々が日々当たり前のことのように受け止めていることに対する人々の注意,関心を深めていくことに寄与できればと願っているのである。
ティム ヘミングトン